ステイホームの風潮が浸透し、SNSやマッチングアプリを利用する人が増えています。
直接会わずに出会えるのが最大のメリットですが、同時に国際ロマンス詐欺の被害に会いやすいという事実もあります。
今回は、仮想通貨を使用した国際ロマンス詐欺の危険性や、対策について、FPに監修をお願いしました。
FP(ファイナンシャルプランナー)
工藤崇
FP-MYS代表取締役社長CEO。 相続×Fintechプラットフォーム「レタプラ」開発。上場企業を中心に多数の執筆のほか、早期相続のコンサルティングに代表される個人相談とFP関連の開発事業を中心に展開。 IFA。
インターネットやSNSの発展によって、きわめてセンシティブなやり取りも匿名性のもとで行われるようになりました。そのなかには「困っているので特別な関係性のあなたに助けて欲しい」と善意に訴えるものも多くあり、各所で被害が生まれています。もし疑わしいときは、詐欺事例として報告されている事例と共通項を探し、毅然とした態度を取ることが大切です。
今回は、国際ロマンス詐欺で実際にビットコインの送金をした事例を紹介し、対処法について詳しく解説します。
【この記事でわかること】
- 国際ロマンス詐欺にみられるビットコインへの誘い方
- ビットコインを利用した国際ロマンス詐欺が増えている理由と見分け方
- ビットコインの送金を迫られた時の対処法
国際ロマンス詐欺でビットコイン詐欺にあった事例
ここからは、実際の国際ロマンス詐欺手口の事例を紹介します。
「そもそも国際ロマンス詐欺とは?」と思っている方は、ぜひ読んでみてくださいね。
結婚資金を作るためとビットコインに誘い込むパターン
国際ロマンス詐欺の特徴は、知り合ってすぐ情熱的な愛の言葉で口説いてきたり、連絡がマメでいつでもあなたのことを考えていると錯覚させ、会わなくても恋愛感情を起こさせることです。
そして詐欺手口として、会うためや結婚するためには資金が必要と持ちかけます。
身分を医師や軍人といった社会的に信用度の高い職業と偽っていることも多く、仕事柄自由に国を行き来できないなど、会えないことに信憑性を持たせることも特徴です。
【実際の事例】
40代女性がマッチングアプリで出会った男性に、仮想通貨400万円分を騙し取られた。
アプローチしてきた相手は台湾で事業を行っており、40代と名乗っていたそう。
プロフィール画像はさわやかなアジア系の男性で、経済的に余裕がある素振りをしていた。
仲良くなるにつれて「結婚」をエサに、投資サイトに誘導され、国際ロマンス詐欺に遭ったそう。
(参考:https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-n93ecabbf8150)
信用させてから資金を奪い取っていなくなるパターン
国際ロマンス詐欺の手口として、一緒にビットコインで投資し資産を増やそうと誘うのも最近の国際ロマンス詐欺の特徴です。
ビットコインは価格の急上昇がメディアで頻繁に報じられています。海外では通貨の代わりに使われている国もありますが、能動的に情報取得しない限り、なかなか詳細がわからないのが実情です。
その不透明さを利用し、国際ロマンス詐欺ではビットコインへの投資が推奨されていると考えられます。また日本株への投資は口座開設において身分証明などの手続きがありますが、不要なビットコインの仲介社も多く、詐欺に活用しやすいという側面もあります。
実業家などを名乗り、投資に成功していることをアピールし、投資で実際儲かっている話や必勝法がある、とあなたを信用させます。
投資を持ちかける手口の場合は、まずビットコインで少額投資をし、実際利益を出してお金を引き出せるようにします。
このように少額投資を数回し、利益を得ることで信用させ、次に高額投資を持ちかけます。
この時点で投資サイトを外部の詐欺サイトに変更しており、お金は増えることなく戻ることもなくなってしまうのです。
【実際の事例】
30代の女性がマッチングアプリで出会った男性に騙された事例。
相手は外国人の経営者を名乗っており、マッチングアプリから無料で会話できるアプリに移行され、恋愛関係に発展。
その後、「2人の将来のため」と称して投資サイトに誘導された。
投資額は500万円にも膨れ上がっており、出金しようとしたところ保証金を支払うことに。
すでに銀行や消費者金融からお金を借りていた女性は、借金返済のことも詐欺師に相談していた。
しかし、相談の最中、詐欺師は忽然と姿を消してしまったそう。
(参考:https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20220303_2.html)
ビットコインを用いた国際ロマンス詐欺が急増している理由とは
国際ロマンス詐欺の手口にビットコインが用いられるケースが急増しています。
現金の送金だと足がつきやすかったり、詐欺だと見破られる可能性が高いこともありますが、国際ロマンス詐欺にビットコインを利用する理由は他にもあります。
ロマンス詐欺の見分け方として、こちらも参考にしてくださいね。
仮想通貨は足がつきにくく本人とバレにくいから
ビットコインなどの仮想通貨は、実際に銀行がなくやり取りの全てがインターネット上で行われます。
ブロックチェーン上に全ての取引が記録され、誰でも閲覧できます。
しかし、取引の記録を見ることはできても、取引当事者の個人や組織の特定はできない仕組みになっています。
そのため匿名性が高く、追跡が非常に難しいため身元がバレにくいという特徴があります。
ビットコインなどの暗号資産はP2P取引を前提としています。たとえば日本円は日本銀行が管理しているように「管理者」がいますが、暗号資産にはいません。ブロックチェーンにて所有履歴は残っていても、追跡が難しいのはそのためです。
国家間をまたいで迅速に送金できるのが暗号資産のメリットですが、このようなトラブル耐性は未成熟といえます。環境整備のコントロール役を担う組織が固っていないという視点もあります。
国際ロマンス詐欺にビットコインが利用されるのは、お金のやり取りで足がつきにくいという仮想通貨の特性を利用しているからなんですね。
詐欺師本人がビットコインをやっており資金にしたいから
ビットコインには価格高騰の可能性があり、実際2020年9月から2021年4月にかけて、100万円台から700万円台にまで上昇しています。
上昇と下落のリスクはありますが、詐欺師本人やグループが資金源として確保しておきたいと思うのも不思議ではないでしょう。
ビットコインは全世界共通価値のため、日本円やドルなど各国固有の通貨よりも扱いやすいことも理由に挙げられます。
さらにビットコインは別の暗号通貨に変換して資金を拡散することも可能なので、詐欺師にとってメリットの多い資金源と言えます。
知識を持っている人が少ないので騙しやすいから
ビットコインは運用開始から10年程度と、まだまだ新しい仮想通貨システムです。
利用自体したことがないし、そもそもなんなのかさえ知らない人も多いでしょう。
国際ロマンス詐欺の被害者はビットコインや仮想通貨の知識が少ない40代以上の女性が多いと言われています。
知識の少ないターゲットに対し、実際に儲けを出して還元して安心させた後、さらに額を増やして投資させるといった手口も増えています。
手元にお金が増えて戻ってきたら、信用して更なる利益を期待してしまいますよね。
最初に小額出資させ、どんどん額を上げるというのも、国際ロマンス詐欺の常套手段ですので気をつけましょう。
ビットコインで送金を迫られたらどうする?対処法について
SNSやマッチングアプリで知り合った人から実際にビットコインの送金を迫られた場合、どうしたらよいのでしょう。
すでに恋愛関係に発展している場合、相手のいう通りにしてしまう可能性が高いのが国際ロマンス詐欺の怖いところです。
ビットコインで送金すると、取り戻すことは非常に困難です。正しい対処法で詐欺被害を回避しましょう。
お金が絡む話は全て拒否して断るようにする
「あなたに会いに日本に行きたいけれど資金がない」
「家族が病気でまとまったお金が必要だが、手元に動かせるお金がない」
「結婚後住む家を買うために資金を増やそう」
「自分は投資で成功しているので、あなたも絶対成功させられる」
などといったお金に絡む話をされたら、全て拒否しましょう。
もちろん相手は断られることを想定しています。
言い方を変え何度でも繰り返しお金の話をしてくるでしょう。
信用されるように、お金が必要な証拠や投資の利益を見せてくることもあります。
しかしこれらは全て偽造ですので絶対に信用せず、強い気持ちで断りましょう。
連絡を取らないようにする・LINEなどをブロックする
あなたが送金を断り続けても、国際ロマンス詐欺師はお金を求め続けてきます。
甘い言葉や同情を誘う言葉を巧みに使い、恋愛感情を利用してくるためやりとりが長くなってくると「1回ならいいかな」と思ってしまいます。
お金を要求してきた時点で恋愛感情は捨て、連絡を取るのをやめましょう。
インターネットかつボーダーレス(国境間の無い)世の中ですが、お金が絡むとトラブルになるケースが圧倒的に多いです。お金が絡むのであれば、契約書など後日立証、資金回収できることを前提とすること。本当に大切な人であれば、このあたりをおろそかにしてお金を借りようとはしません。大切だからこそ、公開性を持ったやり取りを要求しましょう。
相手の連絡先をブロックし、連絡がこないように設定します。
そして重要なのが、相手がグループであると想定することです。
メールアドレスやLINEのIDは相手の詐欺師仲間に共有されているので、別の人間からコンタクト申請が来る可能性があります。
更なる被害に合わないために、メールアドレスの変更やLINEのIDを検索不可にすることをおすすめします。
信頼できる弁護士などに相談してみる
「これって国際ロマンス詐欺?」と思って誰かに相談したい時、最適なのは弁護士でしょう。
詐欺というと警察が相談窓口として思い浮かびますが、警察は事件になってからでないと捜査ができません。
お金が絡んでいても、恋愛関係の相談とみなされ「民事不介入」として積極的に介入してもらえないことがほとんどです。
その点弁護士は事件になる前の段階でも、事例などを参考に適切なアドバイスをしてくれることでしょう。
すでに送金してしまった場合は?情報を集めておこう
恋愛関係にあった相手にビットコインでお金を送った後、相手と連絡が取れなくなるというのが国際ロマンス詐欺の常套手口です。
お金を送ってしまった場合、今後の対策が大切です。具体的な対策として以下を参考にしてください。
- 弁護士に相談する
- 送金先に返金を要求する
- 送金先の情報を記録する
- 警察に被害届を出す
- 「お金を取り返してあげる」と騙る業者に頼らない
送金してしまった場合は、すぐに弁護士に相談しましょう。
裁判所を介した返金要求手続きの場合、弁護士の依頼は必須です。また弁護士としても早めに相談して貰った方が、一般的に取れる選択肢が多く、問題解決の可能性が上昇します。
「資金回収します」という業者は有象無象の場合が多く、依頼料を踏み倒されるなど二次被害の恐れもあります。弁護士は弁護士会がそのような逸脱行為をしないよう厳重に管理しているため、安心できる専門家といえます。
その際、送金先の情報や返金を要求した事実を持っておくことも大切です。
相手が素直に返金に応じるはずはありませんが、送金と返金要求の事実をきちんと記録として残しておくことで、詐欺被害の回復に役立つことがあります。
また、国際ロマンス詐欺被害者の「お金を取り戻したい」という気持ちにつけ込んだ2次被害が増えているという事実もあります。
2次被害とは「お金を取り戻すのに着手金や手数料が必要」とお金を要求し、振り込んだら連絡が途絶えもちろん被害金は戻ってこないというものです。
自分で直接依頼した弁護士以外には返金を期待しないことと、このような持ちかけがあったら必ず弁護士に伝え、対処法を聞きましょう。
まとめ:国際ロマンス詐欺でビットコインが使われるから要注意
国際ロマンス詐欺の被害は年々増えており、手口も現金の送金からビットコインなど仮想通貨を利用する方法に変わっています。
「現金じゃないから、よく聞く詐欺じゃない」「ビットコインの投資なら自分のためにもなる」と、信用してはいけません。
SNSやマッチングアプリで知り合った人にビットコインの送金を求められたら、国際ロマンス詐欺を疑うことが大事。
対処に困ったときは、迷わず弁護士に相談しましょう。
困っている人を助けたい、自分が信頼している人間の助けになりたいという気持ちは素敵なものです。ただ、そのような相談は顔を合わせるなど公開性の高い環境下ですべきであり、匿名でインターネットを使って相談が来るものではありません。人の善意を踏みにじる詐欺行為は許されるものではないため、早い段階で相談するようにしましょう。